ケーススタディ

危機の時代における変革の指導

会社: LS株式会社(東京)
事業内容: インバウンド ホスピタリティ(Q Stayホステル)、外食産業(Q Cafe)
私の役割: グローバルプロダクトマーケティング・ブランディング担当

01.

課題

背景

Q Stayホステルは、2020年オリンピックの開催を見越して東京の上野地区にオープンしました。そこから、日本各地の他の都市へブランドを展開していく計画でした。

このブランドのミッションは、「東京の中心にある文化のハブ」となることであり、中価格帯のホテルの設備を求めつつ、ユースホステルのような社交的な雰囲気も楽しみたい若い海外旅行者をターゲットとしていました。

しかし、Q Stayのグランドオープン直後に、新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、国際旅行市場は壊滅的な打撃を受けました。予約率は急落し、パンデミックの最悪の時期が過ぎた後も回復は遅々として進みませんでした。

グローバルプロダクトマーケティングリードとして、収益を生み出す新たな方法を見つけなければ、会社は長く存続できない状況でした。

仮説

まず、5階建ての賃貸ビルにある利用可能な資産を把握しました。3階分のドミトリールーム(共同部屋)、2つの個室、そしてゲストのための社交スペースとして意図されたカフェバーエリアです。

個室は国内旅行者を対象に利用可能でしたが、2つの個室が満室でも十分な収益を上げることはできません。また、ドミトリーの階は、旅行市場が回復するまで利用できません。

一方で、1階のカフェバーは、独立した飲食事業としての可能性があるように思われました。

調査
と分析

この可能性を確認するために、まず同様の会社が市場の低迷を生き残るために何をしているかを調査しました。上野エリアのカフェやバー、日本全国のホステルが新たな状況にどのように適応しているかをリサーチを行いました。

さらに、パンデミック中に消費者の行動やリスク許容度がどのように変化したかを把握するため、地域の100人以上を対象にオンライン調査を実施しました。

このリサーチは急いで実施されたものの、その結果得られたインサイトは、カフェバーの資産を活用することが短期的および中期的に事業を継続するための最良の手段であるという仮説を裏付けるものでした

02.

行動

Q Stayから
Q Cafeへ

調査結果を社長に提示したことで、ホステルからカフェへの事業運営の転換計画に納得してもらうことができました。

この転換は迅速かつ果断に行う必要があり、カフェバーエリアの顧客体験にも変更を加える必要がありました。もともと宿泊客向けの交流スペースとして設計されていたため、当初のレイアウトはカフェ利用者には最適ではありませんでした。

私は1週間現地に滞在し、現場マネージャーと協力して改善点の把握をし、空間を最適化するとともに、ホステルのスタッフをリスキリングし、カフェの顧客対応ができるようにしました。

コンテンツコラボレーション

上野エリアには既存のカフェ競争があるため、顧客を惹きつけ、リピートしてもらうためには、新しく独自性のある体験が必要でした。

私はブレインストーミングセッションを主導し、その結果、いくつかの魅力的なコンテンツ提携が実現しました。

The SG Club

The SG Clubが提供するMUGI、KOME、IMO焼酎を用いた限定カクテル。

河瀬 璃菜

地元の食材を使用した、料理インフルエンサー川瀬リナ女史によるクラフトメニュー。

東京藝術大学

ホステルおよびQ Cafeの壁を活用し、学生のアート作品を展示・販売するギャラリー兼マーケットをオープン。

デジタルコンテンツ
と広告

有料広告では、狭いエリアに絞ったターゲティングと、メニューで出している料理の写真を使い、近隣の人々の食欲を刺激し興味を引きつけました。

地元メディアとの連携

世界的な観光が停滞している中で、インバウンド観光客から東京の地元住民への認知向上に焦点を移す必要がありました。

Q Cafeの新しいブランドアイデンティティと、開発した独占コンテンツパートナーシップに地元のスポットライトを当てるため、広範な地元メディアに連絡を取りました。

Tokyo Weekender

英語のライフスタイル雑誌「Tokyo Weekender」は、印刷版で料理インフルエンサーである川瀬リナ女史とのコラボレーションを特集し、デジタル版でカフェとホステルのキャンペーンを取り上げました。

テレビニューススポットライト

TBSの「ニュース23」や日本テレビの「ズームイン!!サタデー」といった東京の主要なテレビ番組が、Q Cafeをスポットライトセグメントで取り上げました。

オンライン報道

カフェとホステルは、「Japan Today」や、世界最大の経済新聞である「日本経済新聞」に掲載されました。

イベント

ホステルからカフェへと移行する中で、私は「東京の中心にある文化のハブ」というミッションを守り続けたいと考えました。

私たちの最大のリソースは、12か国以上から集まった多様なスタッフでした。私は、彼らがパンデミックや会社の急速な変化からくる大きなストレスを抱えていることを理解していました。

私はスタッフと協力して一連の国際的な参加型イベントを開催しました。毎月、異なるスタッフが自分の母国の食文化を紹介する夜を開催しました。私はこれらのイベントを、ウェブ広告、ソーシャルメディアの投稿、Meetup.comの掲載を通じて宣伝しました。

このようなイベントは、単なる収益増大を超えて、パンデミックによる不安定な時期にスタッフの士気を高めることに成功しました。

03.

結果

ビジネス結果

ホステルからF&B(飲食業)への移行は最優先事項であり、全員が協力して取り組んだ結果、実行までに1ヶ月もかかりませんでした。移行後の最初の月の売上は停滞していましたが、さまざまなキャンペーンが本格的に効果を発揮し始めると、F&B売上は月ごとに20%の成長を見せ始めました。

この戦略的な転換は非常に重要でした。私たちは、世界的な旅行業界の極度の低迷期において、収益を安定させることができました。LS Corp. とその事業は最終的に2021年に運営を停止しましたが、カフェバー業務への迅速なシフトにより、多くの他の企業が閉鎖を余儀なくされる中、会社の運営期間を1年以上延ばすことができました。

学んだこと

常に柔軟で決断力を持ち続ける

COVID-19パンデミックは多くのビジネスにとって厳しい時期でしたが、特に旅行業界にとっては厳しいものでした。予期せぬ状況が発生した際、生き残るためには、組織が柔軟な考え方を持ち、迅速に行動して新たな機会をつかむ意欲が求められます。不確実な時期におけるリーダーシップは、情報に基づいた決断力が必要です。市場、主要な資産、そして人的資源を理解することは、欠かせない要素です。

04.

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